2話 - 総ての始まり
ふと目を覚ますと、壁の時計はその精一杯伸ばした腕で朝の5:00を指していた。
「また早く起きすぎてしまった」
気付くと口に出していた。
早起きが得意なことを周りは羨むが、裏を返すと眠りが浅く疲れが取れていないわけで、当の本人としてはもっと寝たいと日々切望している。
ネットで”よく眠れる方法”と謳われているものは一通り試してみたが、一向に深い眠りに落ちることができない。目覚まし時計をセットしても、時計が叫びだす5分前には必ず目が覚めてしまうのだ。
もう一度目を瞑りかけたが、新学期の始業式に二度寝で遅刻など許されない。
諦めて朝の支度を始めることとした。
布団から手を使わずに起き上がり、少し腹筋に負荷をかけてみる。朝から痛めつけるんじゃないよ、と腹筋から文句を言われるが、聞かないふりをした。
まだ冬の寒さがしぶとく残っていて、布団から出るのは勇気がいる。
勢いで足を外へ出してみるが、あまりの寒さに耐えきれず元の位置へ静かに戻した。
やはり寝具は布団に限る。床の硬さを感じられるのがいい。旅行でリゾートホテルに宿泊した時などは仕方なくベッドに横たわるが、あのどこまでも沈み込んでいってしまうような感覚がどうも苦手だ。